前回は、私が8年弱勤めた会社を辞めて、フリーランスになる前、「介護」とか「お年寄り」という言葉を身近に感じるようになったきっかけのお話でした。
転職とともに収入激減!!
今回は、私が携わったケア(介護、介助)の経験談を少し。
・・・と言っても、私の経験なんて、ほんの3年間のうちの飛び飛びの副業なので、延べ時間にしたら少ない少ない経験なのですが・・・
Contents
一人暮らしのお年寄りの生活を目の当たりに
1週間7連勤こなせたありがたさ
転職によって年収が半分以下になったため、母子家庭の生活を維持するため、取ったばかりのホームヘルパー2級(現・初任者研修)の資格を活かして、訪問介護の副業をすることになりました。
月~金の9時~18時は普通に会社勤めがあるので、それ以外の空き時間がその時間になります。
そんなに都合よく好きな曜日と時間に利用者さんがいるわけでもないので、2つの介護事業所を掛け持ちで登録しておき、なるべく空きがないように予定を入れていました。
土日は1時間半以上のケアを2件ずつ。
平日の朝、会社に行く前に30分、車いすの利用者さんの通院送迎を2日。
夜会社が終わってから1時間以上のケア2日、とかいった感じでした。
まぁ、普通で考えたら「え~~!無茶苦茶ハード!」と思われるでしょうが、まず、
- 全て家から原チャリで10分以内だったこと
- 下の子が高校生で、そこそこ夜遅い帰宅でも大丈夫だったこと
- 私が超健康だったこと
で、ありがたくもわりと元気にこなしていたのでした。
独居のご老人の多さと生活状況に驚き
私が登録していた事業所の利用者さんは、ほとんどお年寄りで、若い方は脳性麻痺の方の介助がおひとりだけ。
何件お邪魔したかわからないけれど、6割~7割が独居だったと思います。
それは私にとっては、思ったより多い数字で、ちょっと現実をガツンと見せられた感じがしました。
ご夫婦でお住まいで、お二人とも別々の部屋で寝たきり、ヘルパーが24時間態勢でケアというお宅では、ひとりで夜中の泊まり込みはとっても不安でしたし
認知症でひとり暮らしの利用者さんで、玄関をトイレと間違えている方などは、行ったらまず中に入る前に玄関を掃除してから・・・というお宅もありました。
あるものをあるだけ食べてしまうので、すべて手の届かない高いところに置いてあるというような方が、一人で暮らしているのです。
ある意味カルチャーショックでした!
ホームヘルパーの活動の実情
引継ぎや教育訓練の時間不足
そもそも訪問介護は人手が足りなくて、充分な引継ぎとか教育訓練なんてものは、あまり期待できないということも、その時になって知ります。
利用者さん宅に初回伺う時に、前任者に同行してもらうのですが、その1回でその方のケアや、何がどこにあるかなどを全て覚えておかなくてはなりません。
事業所に登録したとはいえ、資格を取って何の経験もない状態で、2回目は一人で訪問するのです。
メモを取ってはいるのですが、いざ一人で行ってみると、「なんでそこメモっとかなかったんだ?」ってところがわからなかったりするんですよね!
で、事業所に電話して聞いても、みんな忙しいので、命に関わることでないかぎり
「そのままでいいから」
的な返事が返ってきて
「え~~?このまま帰るの?」
と、後ろ髪引かれながら帰宅、ということも多々ありました。
気になるけどできないもどかしさ
介護は介護保険の点数によって、お世話する内容や時間が決まっているので、気になってもできないことがあります。
それで私自身もやるせない辛い気持ちになることが多々あります。
利用者さん宅のキッチンが、ねずみのフンだらけで、そこに置いてある食材を使って食事を作るのですが、「こんなものを食べさせていいの?変な病気とか付いてないかな!?」という気持ち悪さと、掃除したくても時間がいっぱいいっぱいで無理という現実がたまりませんでした。
事業所の先輩方にお伝えしても、(仕方ないよね)という暗黙の了解という感じでスルーです。
お掃除するには保険のポイントを充てるか、自費で賄っていただかなくてはいけないということなんですね。
ヘルパーによってバラツキがあるケア内容
一方、別の利用者さんは、身体は思うように動かず、食事時以外はほぼ寝たきりなのですが、90歳過ぎても、冷蔵庫に何が残ってるだろうとか、そこに何があるだろうとか、頭はハッキリ冴えていらっしゃって、まぁけっこう厳しい方だったんですね。
近所のスーパーで食材を買って下ごしらえをしたら、次に入った人が調理して、その次の回も食べられるように残しておくみたいな、連携プレーをしていました。
ある元旦に私がケアに入ったら、冷蔵庫にはいつも通りのものが入っていたので、いつも通りの食事をお出ししたわけです。
そしたら、その利用者さんが
「こんなわびしい正月は初めてだ」
と、嘆かれたんです。
内心「ですよね…お正月ですもんね」と思ったのですが、どうしようもありません。
あるものでしか作れないのですから。
けど、「初めてだ」ということは、これまではそうではなかったということです。
「どういうこと?」と思ったのですが、答えはすぐわかりました。
他のヘルパーさんが、ケアの時間外、つまり自宅で用意したものを持参していたようなのです。
普段から、煮物など時間のかかるものを自宅で作ったりしていたようなんですね。
私は普段から、その利用者さんに
「君は料理がヘタクソだね」
と言われていたのですが、そりゃ時間内で煮物はできないもんね~!
普段は会社員ですから、さすがに自宅で利用者さんのお料理を作る余裕はありません。
というか、そのようにヘルパーごとにケアの内容が変わるのは、よくないことと思っています。
利用者さんには、どこからどこまでが料金内で、どこからがヘルパーの独自サービスなのかはわからないと思うので、「あのヘルパーはやってくれたけど、このヘルパーはやってくれない」ということになってしまいます。
もっと言えば、「あのヘルパーは良くできるけど、このヘルパーは使えない」ということになり、「できない」ヘルパーには利用者さんのあたりがキツくなったりすることだってあるのです。
訪問介護と正社員の兼業は怖い
まぁ、そんなことを悶々と思いながらも、事業所の休憩所で他のヘルパーの先輩方と話をする時間が私にはないので、これは副業ではなかなか難しいなぁと感じたのでした。
その後、その事業所を辞めてからチラッと立ち寄った時に聞いたのですが、その利用者さんはお亡くなりになったとのこと。
もしかしたら、あれが最後のお正月だったのかと思うと、なんとも切なくやるせない気持ちになったのでした。
その後、訪問介護はやはり怖い、不慣れな者が副業でするものではないと思い、訪問介護は辞めました。
未来の介護に対する不安がふつふつと・・・
副業で、途切れ途切れだったので、「介護の仕事をしたことがある」というのもおこがましいのですが、この期間に私の中である思いがフツフツと育ってきていました。
現状で、もし私が介護される立場だったら、やっぱり嫌だなぁと思う場面がある。
私が介護を受けるとしたら、どのヘルパーさんに担当してもらっても、安心して気持ちのいい生活が送れる環境になればいいな。
決して現状のヘルパーさんを否定するということではなく、どうにもならない状況というのがあると思うのですが、少なくとも今は、私が安心して全てお任せできる状況ではないなと思っていました。
だからといって私に何ができるわけでもないのですが・・・
その後、しばらくしてフリーランスになってから、収入が安定しない間、デイサービスに3ヶ月ほど通いました。
このお話は、また次回以降にさせていただきますね。